最近、食べ物が挟まりやすくなったあなたへ〜歯茎の変化と対処法

最終更新日 2025年8月27日 by boyjackcl

最近、食事のたびに同じ場所に食べ物が挟まる…。

そんな小さな違和感に、あなたはお気づきではないでしょうか。

30年間、歯科医師として多くの方のお口を拝見してきましたが、その不快感は、実はあなたの歯茎が発している大切なサインかもしれません。

この記事では、院長として15年間、特に40代以上の患者さんと向き合ってきた私の経験から、なぜ食べ物が挟まりやすくなるのか、その背景にある歯茎の変化と、ご自宅でできるプロの対処法を、専門用語を避けて丁寧にお話しします。

読み終える頃には、その違和感の正体と、未来の健康を守るための具体的な一歩が明確になっているはずです。

なぜ?食べ物が挟まりやすくなる歯茎からの4つのサイン

「昔はこんなことなかったのに」と感じるその変化には、必ず理由があります。

長年、多くの患者さんを診てきた経験から、主な原因は4つあると考えています。

ご自身の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

サイン1:歯茎下がり(歯肉退縮)による隙間

「最近、歯が長くなったように感じる」もしそう感じたら、それは歯茎が下がってきたサインかもしれません。

歯茎が下がる(歯肉退縮)と、これまで歯茎に隠れていた歯の根元部分が見えてきます。

歯と歯の間の歯茎が痩せてしまうと、「ブラックトライアングル」と呼ばれる三角形の隙間ができてしまい、ここに食べ物が挟まりやすくなるのです。

加齢も一つの要因ですが、40代から特に注意したいのは歯周病の初期症状としての歯茎下がりです。

サイン2:歯周病による歯の揺れ(動揺)

見た目では隙間がなくても、噛んだ瞬間に歯がわずかに動くことで食べ物が挟まるケースも少なくありません。

これは、歯を支える骨(歯槽骨)が歯周病によって溶け始めている危険なサインです。

健康な歯でも生理的に0.2mm程度は動きますが、歯周病が進行すると、その揺れは1mm以上になることもあります。

このわずかな揺れが、食事のたびに食べ物を歯の間に押し込んでしまうのです。

サイン3:過去の治療物(詰め物・被せ物)の劣化

若い頃に治療した銀歯などの詰め物や被せ物が、年月を経て劣化し、食べ物が挟まる原因になっていることもよくあります。

保険治療で使われる金属の詰め物の寿命は、平均で5〜7年ほどと言われています。

毎日の食事で噛む力は、想像以上に強いものです。

その力によって、詰め物と歯の間にミクロな隙間や段差ができ、そこが新たな食べ物の定位置になってしまうのです。

サイン4:噛み合わせの変化と生活習慣

無意識の歯ぎしりや食いしばり、頬杖をつく癖なども、歯並びや噛み合わせを少しずつ変化させる要因です。

特にストレスの多い現代社会では、知らず知らずのうちに歯に過剰な負担をかけている方が増えていると感じます。

これらの癖が特定の歯に集中して力をかけ、歯を動かし、新たな隙間を生んでしまうことがあるのです。

放置は危険!歯科医師が語る「食べ物が挟まる」が招く未来

「食べ物が挟まるくらい、大したことない」そう思って放置してしまうのが、一番怖いことなのです。

その小さな不快感は、お口の中だけでなく、全身の健康を脅かす始まりかもしれません。

局所的なトラブル:虫歯と口臭の悪化

歯に挟まった食べカスは、約24時間で細菌の塊である「歯垢(プラーク)」に変わります。

これは、虫歯菌や歯周病菌にとって、格好の栄養源です。

患者さんから「フロスを通すと、なんだか嫌な臭いがする」というご相談をよく受けますが、まさにそれが、挟まった場所で細菌が繁殖している証拠なのです。

放置すれば、高い確率で虫歯や歯周病が進行し、口臭も強くなっていきます。

全身への影響:歯周病と関連する病気

お口は、全身の健康の入り口です。

歯周病菌が歯茎の血管から体内に入り込み、血流に乗って全身を巡ることで、様々な病気のリスクを高めることが分かってきています。

例えば、歯周病は糖尿病の悪化と深く関連しているほか、動脈硬化や心筋梗塞、さらには誤嚥性肺炎などを引き起こす一因となることも指摘されています。

厚生労働省の調査でも、お口の健康が全身の健康に重要であることが示されています。

参考: 厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要」

30年のプロが伝授!今日から始めるセルフケア完全ガイド

原因が分かったら、次にご自身でできるケアを始めましょう。

毎日の少しの心がけで、お口の状態は大きく変わります。

私が患者さんによくお伝えしている、プロのセルフケア方法をご紹介します。

あなたに合うのはどっち?歯間ブラシとフロスの選び方

歯と歯の間のケアには、「歯間ブラシ」と「デンタルフロス」が基本です。

  • 歯間ブラシ:歯と歯の間の隙間が比較的大きい方向けです。隙間の大きさに合ったサイズを選ぶことが何より重要。無理に太いサイズを使うと、かえって歯茎を傷つけてしまうので注意しましょう。
  • デンタルフロス:歯と歯の間の隙間が狭い方や、基本的にすべての方におすすめです。歯ブラシでは届かない、歯と歯が接している面の汚れを効果的に落とせます。

【図解】歯科医が実践する正しい使い方

せっかく道具を使っても、使い方が間違っていては効果が半減してしまいます。

歯間ブラシのポイント

  1. 歯茎を傷つけないよう、歯と歯の間に斜めから優しく挿入します。
  2. まっすぐに数回、往復させて汚れをかき出します。
  3. 奥歯は外側と内側の両方から通すと、より効果的です。

デンタルフロスのポイント

  1. 40cmほどの長さに切り、両手の中指に巻きつけます。
  2. 親指と人差し指でフロスをピンと張り、歯と歯の間にゆっくり挿入します。
  3. 歯の側面に沿わせ、「Cの字」を描くように上下に動かして汚れを絡め取ります。

歯周病予防につながる生活習慣5つのポイント

お口のケアは、歯磨きだけではありません。生活習慣全体を見直すことが、根本的な予防につながります。

  1. 栄養バランスの良い食事:体を守る免疫力を高める基本です。
  2. 禁煙:喫煙は歯茎の血行を悪くし、歯周病のリスクを著しく高めます。
  3. 良質な睡眠とストレス管理:体の抵抗力を維持し、歯ぎしりや食いしばりの緩和にも繋がります。
  4. 食後の歯磨きの習慣化:食べたら磨く、を基本にしましょう。
  5. 定期的な歯科検診:セルフケアでは落としきれない歯石の除去や、プロによるチェックが不可欠です。

セルフケアの限界と歯科医院を受診すべきタイミング

セルフケアは非常に重要ですが、残念ながら限界もあります。

進行してしまった歯周病や、詰め物の問題は、専門家による治療が必要です。

こんな症状は専門家への相談サイン

以下の症状が一つでも当てはまる場合は、お早めに歯科医院を受診してください。

  • 歯間ブラシやフロスを使うと、必ず出血する
  • 歯茎が赤く腫れている、または紫色になっている
  • 歯が浮いたような感じがする
  • 明らかに歯がグラグラと動いているのがわかる
  • 口臭が強くなったと家族や親しい人に指摘された

歯科医院ではどんな治療をするの?

歯科医院では、まずレントゲン撮影などで原因を正確に診断します。

その上で、以下のような治療を行うのが一般的です。

  • スケーリング・ルートプレーニング(SRP):専門の器具を使って、歯周ポケットの奥深くにある歯石や汚染された歯の根の表面を徹底的にきれいにします。
  • 詰め物・被せ物の調整・作り直し:劣化して段差ができた修復物を、精密なものに作り直して隙間をなくします。
  • 噛み合わせの調整:特定の歯に過剰な負担がかからないよう、全体の噛み合わせを調整します。

痛みへの配慮も最大限行いますので、不安なことは何でも相談してくださいね。

よくある質問(FAQ)

Q: 歯間ブラシは毎日使った方がいいですか?

A: はい、1日1回、就寝前の歯磨きの際に使用するのが最も効果的です。歯ブラシだけでは約6割しか歯垢を除去できませんが、歯間ブラシやフロスを併用することで、除去率を8〜9割まで高めることができます。毎日の習慣にすることが、未来の歯を守る鍵です。

Q: 歯茎が下がってしまったら、もう元には戻らないのですか?

A: 残念ながら、一度下がってしまった歯茎をセルフケアだけで元に戻すことは非常に困難です。しかし、歯周病の進行を食い止め、これ以上歯茎が下がるのを防ぐことは可能です。また、歯科医院では歯肉移植などの専門的な治療法もありますので、まずはご相談ください。

Q: 電動歯ブラシを使えば、歯間ブラシは不要ですか?

A: 電動歯ブラシは歯の表面の汚れを効率的に落とせますが、歯と歯の間の狭い隙間の汚れを完全に取り除くのは難しいです。私の臨床経験上、電動歯ブラシをお使いの方でも、歯間に歯垢が残っているケースは多く見られます。フロスや歯間ブラシとの併用をおすすめします。

Q: 食べ物が挟まりやすい場所と、そうでない場所があります。なぜですか?

A: 挟まりやすい場所は、歯周病が部分的に進行していたり、過去の詰め物に問題があったり、特に力がかかる噛み合わせであったりする可能性があります。場所によって原因が異なることが多いので、歯科医院でレントゲンを撮るなどして、正確な原因を特定することが大切です。

Q: 40代になってから急に気になり始めました。年齢のせいでしょうか?

A: 加齢も一つの要因ですが、40代、50代は長年の生活習慣の蓄積によって歯周病が進行しやすい時期でもあります。「年齢のせい」と諦めずに、今から適切なケアを始めることで、進行を食い止め、健康な状態を長く保つことができます。

まとめ

食事のたびに感じていた小さな違和感の正体が、お分かりいただけたでしょうか。

30年間、歯科医師としてお伝えしたいのは、「歯のトラブルは“ちょっとした違和感”の段階で気づけるかどうかが鍵」だということです。

食べ物が挟まるのは、あなたの歯茎が助けを求めているサインかもしれません。

今日ご紹介したセルフケアを実践し、もし不安な症状があれば、ぜひお近くの信頼できる歯科医にご相談ください。

あなたの10年後、20年後のお口の健康は、今日の小さな一歩にかかっています。